カンヌライオンズのアワードエキスパート、スージー・ウォーカー氏に2020/2021年度のカンヌライオンズについて教えてもらいました!
スージー・ウォーカー
VP of Awards & Insight at Cannes Lions International Festival of Creativity
Q1. 今年のカンヌライオンズ、アワードから見えてきたものは何ですか?
今年のアワードでは、ゲームの台頭、eコマースの役割の変化、パーパスなど、いくつかのトレンドやテーマが見られました。
デジタルブームが続く中、新たなチャネルとして「ゲーミング」が注目され、拡大していることがわかりました。特に、ゲームをアイデアの中核に据えた受賞が増えていました。ダイレクト部門では、ゲームがより影響力を持つようになり、ブランドがコミュニティとの絶妙な関わり方を見つけていることがわかりました。
今年は、2018年に開始されたクリエイティブeコマース部門へのエントリーが12%増加しました。審査員たちは’everywhere commerce(どこでもコマース)’ ‘distributed commerce(分散型コマース)’ ‘equitable commerce(公平なコマース)’について多く語り、また、社会的行動や文化的洞察に焦点を当てた作品が大幅に増加しました。
「パーパス」に関しては、最近の未曾有の経済的、感情的な課題に対して、正面から取り組むインパクトのある作品を作ることで立ち上がったブランドが多くありました。
Q2. 受賞・ショートリスト入りした作品の中に、世の中の動きを反映したものはありますか?
この1年半の間に、私たちは、クリエイティビティを前面に押し出して推進している、真の意味での画期的なイノベーションの例や、発明、再発明、コラボレーション、再生、思いやりなどの魅力的なストーリーを目にしてきました。
これらの作品は、世界情勢をごく自然に反映しています。特にクリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション部門では、パンデミックが新しいタイプのクリエイティビティを加速させ、変革がビジネスの中心に持ち込まれたことが明らかになりました。人々の消費やブランドとの関わり方を変えた成長中の消費者動向である「ローカリズム」のアイデアが、多くの作品に反映されていました。例えば、Anheueser-Busch InBev社が提供するローカルeコマースプラットフォーム「Tienda Cerca」(クリエイティブeコマース部門グランプリ受賞)は、COVID-19危機の際にコロンビアのボゴタで近隣のローカル店舗と顧客を結びつけました。
Q3. 今回から新設されたクリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション部門について教えてください。今回の受賞作品をどのように評価されましたか?
クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーションとは、ビジネスを前進させるクリエイティビティ、つまり、ビジネスの組織や人々の働き方、顧客との関わり方を変えるクリエイティブな考えのことです。パンデミックが起こる前にこの部門を導入したのは、企業の考え方が全体的に変わってきていることを感じていたからです。
この1年半の間に、非常に多くの企業が変革を余儀なくされたため、この賞の新設は非常に適切なものとなりました。サンパウロから東京まで、世界各地からエントリーがあり、トランスフォーメーション(変革)が世界的な課題であることを示しています。
この部門では、パーパスと利益が大きな意味を持っていました。受賞した9つの作品のうち、ほぼ半数がブランド・パーパス&インパクト・カテゴリーのエントリーによるもので、これはトランスフォーメーションの成功の多くが創造性と目的の追求から始まることを示しています。
すべての受賞者に共通しているのは、サステナビリティ、ダイバーシティ、インクルージョンを、事業、消費者、パートナー、業界、そして世界のために、さまざまなレベルで同時に価値を創造する機会として捉えていることであり、もちろんこれは利益にもつながっています。
Q4. 日本のマーケターやクリエーターへのコメントをお願いします。
今年のカンヌライオンズで、日本は14個のライオンを獲得しました。応募作品のわずか3%しか受賞できないため、受賞は素晴らしい成果です。また、今年は審査員の中にも日本の方が多くいらっしゃいました。
次のSpikes Asia(22年3月)は、アジア太平洋地域の代表的なクリエイティブアワードです。日本が地域レベルでどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、また、特定の市場から生まれるトレンドやテーマを楽しみにしています。