2022.4.8 share

アジア最大級の国際広告祭「スパイクスアジア」。このプログラムの一環で、30歳以下の2人1組の各国代表たちがアイデアを競い合うコンペティション「ヤングスパイクス」。

去る1月にオンラインで開催されたヤングスパイクス2022の日本代表団が、このたび報告会を実施しました。

ヤングスパイクスに出場した日本代表チームは4部門8組の、総勢16名。そのうち、デジタル部門日本代表の有田 絢音・中村 心ペアが見事GOLDを受賞。各ペアが提出した企画と、ヤングスパイクス本戦に出場した感想を伺いました。

【デジタル部門】

課題:新型コロナワクチンについて、どのようにデジタルプラットフォームやソーシャルメディアにおける誤情報を解明し、ワクチン接種を推奨すれば良いか。

有田 絢音・中村 心ペア*GOLD受賞チーム
企画タイトル:#GetVaccineForTheirSake

コメント:ワクチンがある今を生きる私たちは恵まれている、ということに気づいたことが着想のきっかけでした。新型コロナウイルスが原因で亡くなった方の中にはきっと、ワクチンの開発が間に合っていれば、打ちたかったという人もいます。今を生きる私たちにはあたりまえのようにワクチンがあって、そのありがたさなど普段は意識できてないように思いますが、だからこそ人々の意識を変えうる強さがあると思いました。

著名人の中にも、ワクチンの開発が間に合わず、新型コロナウイルスが原因で亡くなってしまった方は世界中にいます。遺族の同意を得ながら、亡くなってしまった著名人をAIで復活させ、彼らから、「私とはちがって、今を生きるあなたにはワクチンという選択肢がある。摂取を検討してみてほしい」とメッセージするというのが企画のコアです。

また、彼らの生前のSNSアカウントがある日突然動き出すところからキャンペーンが始まるという、驚きのある企画に仕上げました。

国際的な大会で評価してもらえたことは大きな自信になりましたが、調子に乗ることなく、これからも”クリエイティブ”に真摯に向き合っていきたいと思います。

下萩 千耀・松木 啓ペア
企画タイトル:RECRUITING MISINFO EXPERT

コメント:デジタル上ではびこる、ワクチン接種に関する様々なデマ。デマを信じてワクチン接種を忌避する人々をリクルーティングし、MISINFO EXPERT(デマの専門家)として起用。彼らに給料を支払ってデマに関するファクトチェックやリサーチをさせることで、結果的にデマをデマであると認識させ、ワクチン接種を促す企画を提案しました。

デマを流す人々に直接的にアプローチする企画にしましたが、デマを流す人々はデマを心から信じているので、そのデマをデマと気づかせることの難しさが企画のネックになってしまったかもしれません。

【PR部門】

課題:母の日に、香港の慈善団体である「Mother’s Choice」への募金を集めるキャンペーンの開発

山田 将平・北園 隼大ペア
企画タイトル:#TravelMomsHome

コメント:帰省こそが、母親への最大のプレゼント。母親のもとに帰省することを旅として捉え、旅先として実家がレコメンドされる旅行サイトを母の日にローンチ。#TravelMomsHome のハッシュタグと共にこの帰省旅行を一大ムーブメントにし、募金を集めるキャンペーンを企画しました。

結果としては敗退。審査員からは「寄付が集まりそうな企画で、帰省旅行のアイデアも好きだ」と言うポジティブな評価もありました。一方で、受賞作と比較するとブランド視点が弱い提案であったことが敗因だったと思います。

また、北園のストラテジー視点と山田のエグゼキューション視点の掛け算による、強いコアアイデア開発がチームの持ち味でしたが、力不足でそれらが発揮できなかったことも、受賞を逃した理由だったと振り返っています。

水田 秀俊・井尻 峻介ペア
企画タイトル:#WelcomeCryBaby

コメント:子を持つ母親たちは、常に世間の目にさらされています。特に公共の場で子が泣いた時、母親たちは批判の視線を一気に受けることになります。泣く子を鬱陶しいものではなく歓迎されるものにするために、泣く子の顔写真を募るフォトコンテスト「#WelcomeCryBaby」をローンチ。コンテストの参加者に、泣く子に困る母親たちのために募金を促すメッセージを送信することで募金を促進します。

受賞作や審査員のコメントを見ると、いかに募金にダイレクトに繋げることができるかが勝敗を分ける鍵になったと分かりました。泣いている子供たちの顔写真を募るフォトコンテストの面白さを企画の中心としたことによって、募金の位置づけが弱くなってしまったことが敗因だと考えています。

【メディア部門】

課題:メディアを活用した、アジアの中低所得国の人々への新型コロナワクチン接種の推奨

長谷川 輝波・下 穂菜美ペア
企画タイトル:#SaveTheTaste

コメント:アジアの国々には、その国独自の魅力的なローカルフードが存在します。新型コロナウイルスの特徴的な症状の1つは「味覚を失うこと」。味覚を失っては、アジアの人々は自国のローカルフードを堪能することができません。

この点に着目し、私たちは「味のないローカルフード」を開発。味のないローカルフードを各国で提供することで人々に味覚を失うことを体験させ、ワクチン接種を促すキャンペーンを提案しました。

受賞作は分かりやすくソーシャルメディアや音声メディア等を使ったものが多かったため、メディア部門らしい企画を提出できなかった点が1つの反省点として挙げられると思います。

久古 はる香・塚田 航平ペア
企画タイトル:#Vax4Credit

コメント:アジアの中低所得国家では「マイクロファイナンス」という貧しい人々向けの金融サービスが普及しています。マイクロファイナンスの借入には、健康状態を良好に保つことや仕事に励むことなど、貧困から脱することを目指した幾つかの誓いを立てることが必要です。ここに「ワクチン接種をして自身や家族の健康を守ります」という誓いを追加することで、マイクロファイナンスを利用するためにもワクチンを接種しようという企画を提案しました。

企画開発に際して、マイクロファイナンスと”借入時に必要な誓い”を見つけたという点には自信がありました。しかし、そもそもマイクロファイナンス運営会社にとって本企画に協力するメリットが弱いなど、実現までのハードルが企画としての弱みになってしまったと考えています。

【インテグレーテッド部門】

課題:アジアの中低所得国の人々に新型コロナワクチン接種を推奨するための、統合キャンペーンの開発

Ren Hasuda(蓮田 真優美)・蓮田 潤ペア
企画タイトル:Vaccinated Medalist

コメント:実の姉弟でヤングスパイクスに挑みました。北京オリンピックに乗っかりたい!その思いだけで生まれた企画です。オリンピックのメダル授与式で、ワクチン接種済みのメダリストたちに「ワクチン接種済みメダル」を授与。メダル授与式の様子を世界的に放映することで、メダリストたちの栄光と共にワクチン接種に対するポジティブなイメージを広げるキャンペーンを提案しました。

GOLDを受賞したいという思いを企画に乗せたつもりが「インサイトの深堀が弱い」と審査員からバッサリといかれ、見事に撃沈してしまいました。受賞した企画はインサイトがしっかりと深堀されていて、かつインサイトのユニークさがありました。次回出場する際は、今回学んだことを活かして必ずリベンジしたいです!

本報告会には、6月にカンヌで開催されるヤングライオンズの日本代表たちも参加。ヤングライオンズ本戦に向けた準備方法などについて、ヤングスパイクス日本代表たちと意見交換を行いました。

ヤングスパイクス日本代表の皆さん、コロナ禍で大変な日々が続く中での本戦出場、本当にお疲れ様でした。

それでは今後の日本代表の健闘を祈って、ヤングライオンズ日本代表の皆さんにバトンタッチします!

文責
ヤングスパイクス インテグレーテッド部門日本代表
Ren Hasuda(蓮田 真優美)

撮影
ヤングライオンズ メディア部門日本代表
高橋 健太・堂福 大成