分身ロボ通じ自宅から案内業務も
NTTの梅津佳奈氏は①NTT②IOWN③NTT XR④テクノロジーを利用した新しいワークスタイル⑤将来のコミュニケーション――をテーマに話した。NTTグループと京都大学の出口康夫教授が提唱した「われわれとしての自己観(Self as We)」という基礎概念があり、世界有数の研究開発部門を備えた通信企業として光学テクノロジー「IOWN(Innovative Optical & Wireless Network)」で低消費電力、大容量、低遅延の伝送を実現すると訴えた。最新技術を提供するブランド「NTT XR」も3月に立ち上げた。ユーザー数100万人超の自社運用メタバース「DOOR」内ではアバターを使い、障がい者によるガイドも進めている。NTTグループでは約3900人の障がい者が働き、資本業務提携したオリィ研究所の分身ロボット「OriHime」を自宅から操作して案内業務をする例もある。
日本は「アート資産大国」の可能性
アートフェア東京の北島輝一氏によると、アジア最大級の美術品展示・即売のアートフェア東京2022には151軒のギャラリーが出展し、約33億6000万円を売り上げた。11年に約3億円だったフェア売上高は現代美術のけん引もあり21年には30億円に達し、さらに成長。フェア後にギャラリーで売られるアフターセールも好調という。「日本でも現代美術にブームの兆しがある」。コロナ禍で世界市場は5兆円台に落ち込んだが、21年には7兆円台に回復。美術品は株式を上回る利回りが得られる資産として注目されている。日本は1980年代以降、作品の輸入が常に上回り「アート資産大国の可能性がある」。眠っているアートの活用には①価格妥当性や流動性など信頼と信用の向上②分離課税など資産として取り扱う法整備③価格の将来性や割高割安の分析――が重要だと訴えた。
データ活用で「より良い体験」提供
金融庁と日本経済新聞社が共催する日本最大級の金融イベント「FIN/SUM」の紹介では、リクルートの三輪純平氏が3月のFIN/SUM2022における「ライフスタイルとキャッシュレスの新たな関係」のパネルについて「客と店が互いにデータをシェアすることで新たな共感関係が生まれるとの議論が進んだ」と振り返った。トレジャーデータの堀内健后氏も登壇した「金融機関が顧客に届ける新しい体験」について「銀行が持つデータを最適のタイミングで顧客に提供し、より良い体験をしてもらうことが重要なポイント」と述べた。FIN/SUMでは従来の金融機関やスタートアップ、IT関連に加え、商社・流通業の参加も増えている。後段では楽天アドバタイジングの大木裕子氏が金融機関のマーケティングの傾向を解説、最先端の例としてスウェーデンの後払い決済大手クラーナの取り組みを説明した。
「嫌い」が生み出すイノベーション
「嫌い資産の流動化」について遠山正道氏は「人はいいもの、好きなものばかりに目が行きがちだが、それ以外にも可能性がある。主流ではなく亜流から行くのはイノベーティブの一つのコツ」と解説。有村理沙氏は自身の過去の交通事故体験を挙げ「退職後、社会に選択肢がなく起業した。当時は絶望したが、今では想定を超えた経験につながった」と述べた。白石小百合氏も「人の心に刺さるときは、ネガティブとか嫌いとか、自分の中で想定していなかった要素も大事になる」と同意した。
白石氏が「どうやって『嫌い』に気付けるのか」と問いかけると、有村氏は「嫌いについてあえて定義せず皆に委ねている」と語った。遠山氏は「嫌いが資産になり得ると知れば生きやすくなる。嫌いだと思っている要素を発見しながらそれを価値に転じていくと面白い」と展望を述べた。
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