2025.4.25 share

Q1審査を通して得た気づき

審査員長として、たくさんのエントリーに向き合う中で、あらためて「アワードとは何か?」を考えました。それは、ただ優劣を競う場ではなく、若いクリエイターたちが「新しい何かを学べるもの」として、希望を抱ける作品を称える場であるべきだと。そして、審査員全員がその想いに共鳴してくれました。審査を通じて、私たちは「新しい何か」を探しました。
ソーシャル&インフルエンサー部門では、SNSでどれだけ話題になったかではなく、コミュニティーやインフルエンサーのポテンシャルを最大限に活かし、新たな社会的価値を生み出した「TRANSITION BODY LOTION」がグランプリに。デジタルクラフト部門では、「心を動かすクラフトは、社会もビジネスも動かすのだ」というメッセージとともに、「HERITAGE DATABANK」をグランプリに選出しました。どちらの作品も、従来の定義では見落とされそうな存在でしたが、だからこそ今回、選ぶべき価値があると信じました。
アワードのカテゴリー定義は、毎年変化し、進化します。前年の傾向をなぞるだけでは、未来は切り拓けません。むしろ、自らのエントリーでカテゴリーの定義を更新するようなエントリーにこそ、審査員の心は強く動かされると感じました。

Q2審査の中で印象に残った施策作品名とその印象について。

①SHIFT 20 INITIATIVE: CASTING CALL

TikTokを活用し、障害のある方々のための新たなキャスティングの仕組みを創出したプロジェクトです。これまで広告に登場する機会がほとんどなかった障害者に向け、従来の閉ざされたキャスティングプロセスを変革しました。TikTokをオープンなオーディションの場として活用することで、障害のある方々が自らの魅力や才能を自由に発信できる仕組みを実現しています。ソーシャルメディアの力を活かした、新しい発明だと感じました。

②TRANSITION BODY LOTION

世界で初めて、トランス女性専用として開発されたローションです。クライアントをはじめ、インフルエンサーやコミュニティとともにつくりあげたプロジェクトであり、美の在り方に新たな視点をもたらしました。コミュニティの力を感じる素晴らしい取り組みです。実際にバンコクの売り場も視察しましたが、商品は自然に陳列されており、とても印象に残っています。

③SATO 2531

「全員が佐藤になる未来」というユニークな説をもとに、姓制度の課題を可視化したプロジェクトです。発想のユニークさに加え、それを裏付けるための研究も非常に興味深いものでした。テーマ自体は深刻でありながら、審査員ルームでは思わず笑いが起こる場面もあり、クリエイティブの力を実感した瞬間でした。発見から実行までの力強さも印象的でした。