カンヌライオンズのアワード審査は、審査委員長のブリーフィングによってはじめられる。通常公開されないが、今回は特別に、LIONS Live期間中にカンヌライオンズのマネージング・ディレクターのサイモン・クックによる各審査委員長に対してのインタビュー形式で、その裏側を知ることができた。
LIONS Live Day4では、Outdoor部門のブリーフィングが行われた。来年のカンヌで、2020年、2021年の2年分が審査される予定だ。
ルイス・サンチェス審査員長の言葉を聞いて感じたことを来年Outdoor部門の審査員を務める間部奈帆さんにインタビューした。
― President Briefingを見てのご感想をお願いします。
「私たちが旅して回れない分、アイデアに旅してもらう時です」というフレーズが、印象的でした。From localのhuman insight/spirit に深く根ざしたアイデアこそ、online/offlineの垣根なく、物理的な距離も超えて、世界を軽やかに旅する。旅の途中で、そのアイデアは様々な人と出会い、口の端にのぼり、盛んにディスカッションされ、人々の感情や価値観を揺さぶる。そういう影響力のある旅をしたアイデアを讃えようよという意味だと理解しました。
― 審査委員長のルイス・サンチェス氏は審査員に対して、「人と人の間の対話を生み出すような、温かみのある広告を選ぼう」と呼びかけたいとしていますが、2020/21年の作品を考える上で間部さんご自身が注目している観点はございますか。
世界中で、外出が制限される事態になった今年、多くの人が、屋外を自由に移動できることのありがたさや心地よさを体感しました。今こそ、outdoor categoryの未来を深く考える、またとないチャンスだと思っています。また、不安定な状況だからこそ、togetherness, funness, happinessなど、positiveな空気を分かち合うことの貴重さがclose upされる機運を感じています。世の中に明るく朗らかな光を灯す作品に出会えるといいなと期待しています。
― コロナ禍、対面の打ち合わせが難しいことや、新たな撮影ができないなど様々な影響がでています。業界の中で所謂「ニューノーマル」は生まれてきていると感じるシーンはありますか?
打ち合わせやプレゼンなどで、海外との仕事ではこれまで当たり前にやっていて、ただ、国内仕事では見受けられなかった手法が、国内で一般化してきている感じはします。また、撮影や編集などのフェーズで、technologyを介した新しい取り組みにも出会っています。それが日本のnormalになるのかは、正直まだわかりませんが、何れにしても、コロナ禍を機に、これまでのhealthyでない業界の慣習が、healthyなnew normalになることを、願っています。
― 間部さんにとって、「カンヌライオンズ」とはどのような場所ですか?
8年前、当時3歳と1歳の子どもを日本に残してカンヌに行ったので、その意味で、とても思い出深い場所です。飛行機で何かあったら子どもたちはどうなってしまうだろうと考えて、ずっと行くこと自体を悩んでいて…でも、行ってみたら、自分だけのために24時間使えることが新鮮すぎて、そわそわしつつも、たくさん人に会い、学び、吸収して、楽しかったのですが。
― これからカンヌを目指すクライアントやクリエーターへ、一言コメントをお願いいたします。
世界の広さ。様々な人たちの、様々なアイデアに触れられる、ある種の混沌。
世界の狭さ。同じところで頷いたり、笑ったりできる、ある種のシンプルさ。
そのダイナミズムを、一緒に体験しましょう。