2023.3.30 share

1.審査を通して得た気づき

「すべてのテクノロジーはアイデアと物語を求めている。」そんなことを思った審査でした。最先端技術を使用しているから点数を獲得するというフェーズは既に終焉し、伝えたいメッセージや解決したい課題に対する適切な手段や技術の選択と、解決の仕組み化を社会実装していることが求められる時代に入っていると思いました。最適な技術を、最適に組み合わせ、見たことのないアウトプットを作るために設計し尽くされているかどうか。グランプリを受賞した「The First Digital Nation」が使用しているテクノロジーは、必ずしも新しいものではありません。でも、完璧なタイミングと完璧な文脈と完璧な技術のおり混ぜ方だと思いました。

また、ちょっと余談ですがSPIKES ASIAのカテゴリ分けの特徴として、「デジタル」と「デジタルクラフト」に分かれていないということがあります。つまり、ピュアにクラフト力という項目はもちろん重要なのですが、同時にMeaningful、Social Responsibility、Scalabilityといった要素も同時に審査をしていく必要があるわけです。結果を見ても、その両立ができているものに多く票が入っているし、個人的にこれからのデジタルクラフトはそんな「メッセージの織り込み方のクラフト力」も評価すべきだなとも感じました。

2.審査の中で印象に残った施策 



VOICE WATCH

VOICE WATCHは、モータースポーツにとどまらない、今後の可能性を感じました。実況の偏りというこの競技特有の課題をしっかりととらえた上で、アイデアを作っている点、そして、ちょうど良い情報をちょうどよく届けるために計算されたUI設計も評価したいポイントです。



②PROJECT RELATE

PROJECT RELATEは、Googleがずっと続けている社会支援×テクノロジーの延長だと思うのですが、単体の評価とは別の話になりますが、まず企業としてのこのスタンスが素晴らしいと思います。こちらもAIをベースにした取り組みですが、コンセプトを横展開できるという価値があり、いろんな企業がもっとこういう領域を増やしていく追い風になれば良いと思います。Voice WatchもAIを利用していますが、クリエイティブ業界特有の「AIってもう古いよね」的な消費するのではなくこれらのように、世界中にある課題をさらに見つけ、アイデアで水平展開していけるといいなと思います。



③ SUNTORY TENNENSUI ENDLESS DAWN

SUNTORY TENNENSUI ENDLESS DAWNは、フォトグラメトリを用いて北アルプスの壮大さを描きながら、音楽と言葉を組み合わせて美しい世界を描き出しています。北アルプス全体をデータに収め再現するという、圧倒的かつ計算された手法は、群を抜いていました。その上で、水を大切にするという企業ビジョンからつながる「山を大切にする」思想をウェブサイト全体のストーリーと完全にマッチしている点も評価が高いです。
(DOT PADもクラフトとして高く評価しているが、Mobileで解説しているためここでは割愛します)