Q1審査を通して得た気づき
Film部門の審査を通じて、改めて実感したフィルムの力。それは、人の心を動かす力です。
ビジネスや組織、社会や常識。それらを動かすにも、人の心を動かさなければいけません。練りに練られたロジックや立派に作り上げられたビジネス計画書を用意しても、それだけでは動かしきれないのが人の心。それを優れたフィルムはわずか数分で、いや時には数秒で、鮮やかに動かしてみせる。
ハッとするアイデア、グッとくるストーリー、オッとなるインサイト。それらを形にして届けるクラフトやエンターテインメント。限られた尺の中にギュッと凝縮された冒険物語が、重くて動かなかったものをスッと動かしていく。難しい問題をシンプルに、ビジネスライクな関係をエモーショナルに、ネガティブな状況をポジティブに。
ビジネス課題はますます複雑になり、社会的意義を求められ、メディアもカルチャーも価値観も多様化しています。今という時代において根幹となる人の心を動かすこと、それがフィルムに求められる役割と可能性なのだと思います。
Q2審査の中で印象に残った施策作品名とその印象について。
①SAMMAKORN NOT SANPAKORN
満場一致で決まった今年のFilm部門グランプリ。ブランド名が引き起こす大混乱を、莫大なコストや労力をかけたビジネス変革で解決するのではなく、フィルムならではのアイデアとユーモアによって、エンターテインメントに転換。ブランドのアイデンティティにまで進化させたところに、クリエイティブの凄みを感じました。
②MY PARENT IS A TIKTOKER
こちらもタイの作品。帰省を願う親の連絡を無視してTikTokを見続ける若者を振り向かせるべく、親をTikTokerにしてインフルエンサーのTikTokをジャック。Z世代へのリーチや効果的なエンゲージメントのためには、SNSをただフィルムを横展開するだけのメディア扱いではなく、インテグレーションやインフルエンサーの活用方法にアイデアのある掛け算が必要だと思います。
③A TRAIN OF MEMORIES
日本からのゴールド受賞作品。ディテールまで丁寧に作り込まれたクラフト、撮影時のチャレンジ、ローカルインサイトを捉えた表現に審査員一同リスペクトがありました。地域の生活に根差したブランドらしく、必要以上に誇張された演出や派手なセレブレーションにしていないところも、ブランドならではのストーリーテリングとなっていて素晴らしいです。