2024.5.8 share

Q1審査を通して得た気づき

Healthcare部門のエントリー数は複数カテゴリーでのエントリーも含み118作品。今年のグランプリにはCannesでも受賞歴のある“FITCHIX”が選ばれました。アニマルヘルスカテゴリーのグランプリ受賞はSpikes史上初だったようですが、“データと革新性”“共感と有効性”“技術と人の想像力”といった様々な要素が融合されている点において高い評価となりました。

Healthcare部門で扱われていた健康テーマは広く様々で、エントリーの中に臓器移植やメンタルヘルス、LGBT+の方々の医療問題、子どもの視力低下など、現代ならではの課題に取り組まれている作品が多くあり、それぞれの国や地域によって異なるルールやお作法、社会的タブーをどう乗り越えて課題解決を図るか、といったローカルカルチャーに寄り添ったインサイトの発掘とアイデアの着眼点により創意工夫された作品が多かったことが印象的でした。またそれらが、閉じられた特定のコミュニティだけに有効なアプローチにとどまらず、他のコミュニティや課題解決にも応用、展開されていく兆しを見ることができるアイデアや作品が多くあったことも印象深かったです。

最新テクノロジーを活用したもの、ゲーミフィケーションやアート、スポーツ、音楽を掛け合わせたユニーク且つインパクトのある作品も数多くありました。が、それらの取り組みがどれだけ持続可能に社会実装されているかが求められていたことも、人や動物の健康課題を扱うHealthcare部門ならではだったのかもしれません。

Q2審査の中で印象に残った施策作品名とその印象について。



①YELLOW CANTEEN

“Flies hate yellow”というエビデンスに目をつけた着眼点から、子どもたちの健康を守るという直接的な課題解決に向けたアクションまで、アイデアはとてもシンプルではあるものの、コミュニティへの実質的な貢献と塗料メーカーのブランドの成長を同時に実現できた好事例。“食堂を黄色に塗装する”というアクション自体が自走可能であるというのも評価されるべき点だと感じました。



②FWD SINGING BUS

バス停で待つ視覚障碍者の方々がバスの接近を知ることができるよう、バスにサウンドシステムをデザインしたという事例。こちらもアイデア、アクションともに非常にシンプルではあるものの、まだまだ社会に実装されているものがユニバーサルデザインでは設計されていないという事実に気付きを与える1つの取り組みであり、視覚障碍者以外の人々にも貢献できる可能性があるように思いました。



③GAMMA WAVE SOUND 

すでに注目度も高く、広く知られている作品ではありますが、いまだ根本的な治療薬のない認知症への課題解決に挑まれているプロジェクト。患者さんの脳内 の「ガンマ波」という脳波が少ないという研究に着目され、多くの賛同企業とともに社会のあらゆる音がなる場所で「ガンマ波サウンド」を溶け込ませるという取り組みは、高齢化に向けた具体的な課題解決の一助となる可能性を秘めており、今後の展開に大きく期待ができると感じました。